頭脳警察・仮面劇のヒーローを告訴しろ

	仮面劇のヒーローを告訴しろウイスキー･ハイウエイまるでランボーハイエナ恋のいらだちホ短調の間奏曲仮面劇のヒーローを告訴しろイエス･マン麗しのジエット･ダンサー愛なき日々プリマドンナ間違いだらけの歌
前作から約半年の早いペースで1973年11月リリース。引き続きオリジナルメンバーのトシはバンドを離れている。馬飼野康二（Key, String Arrangement）、水谷公夫（g）、武部秀明（b）、田中清司（ds）がサポート。水谷公夫は、GSの「アウトキャスト」、「アダムス」出身で、スタジオミュージシャン～作曲家～プロデューサーとして現在も活躍中。エンジン音のSE～サバス風リフの「ウイスキーハイウエイ」で、アルバムがスタートする。BB、ポルシェ、ミウラ、Ｚ、など、スポーツカーの名前が並ぶ。この後ソロへと続く、PANTAのスピード狂？路線の萌芽になる曲。過去、2度PANTAを路上で見かけたが、1度はオープンのスポーツカーに乗っているところ、1度は止めてあったバイクに跨りかけたところ、だった。「まるでランボー」は、シンプルなコードとリズムで、歴史上の芸術家達（の側面を）をアフォリズム的に語っていく。PANTAの遊び心が楽しい曲。妙にハまったストリングスが後半響く。「私は君の意見には反対だが、君がそう発言する権利については命をかけても守る（ボルテール）」オリジナルアイデアは、ブリジット・フォンテーヌの、”Comme Rimbaud（1970）”。 Comme Rimbaud Je suis sale comme Rimbaud Je suis lache comme Villon Debauchee comme Hugo Syphilitique comme Baudelaire Mais peut-etre apre tout N'aimez-vous pas la poesie 私はランボウのように穢れている私はヴィヨンのように卑劣だユーゴーのような放蕩者ボードレールのような梅毒患者でも恐らくあなたは詩なんてお好きじゃないわね（ランボーのように／ブリジット・フォンテーヌ）みっともないオレはまるでランボー卑怯者のオレはまるでヴィヨン乱暴者のオレはまるでユーゴー梅毒のオレはまるでボードレールでもね君には詩なんてわからないインチキなオレはまるでラシーヌ露出狂のオレはまるでルソー冷静思想のオレはまるでボルテール架空のオレはまるでシェクスピアでもね君には文学は無理だねドジなオレはまるでミケランジェロアル中のオレはまるでユトリロゴマスリのオレはまるでベラスケステンカンのオレはまるでゴッホでもね君には絵なんてわからない（まるでランボー）「ランボー」と、ギターインストの小曲「ホ短調の間奏曲」を除くと、（アナログ盤での）A面は、けっこうヘビーなアレンジの曲が続く。「ハイエナ」は、ファンキーなリズムアレンジ。「仮面劇のヒーローを告訴しろ」はふたたびサバスっぽい。翼を広げ羽のようにクルクル　大空を飛び回る嘴を研いで獲物を狙う　禿鷹のようにハイエナ　ハイエナ　お前はまるでハイエナハイエナ　ハイエナ　お前はまるでハイエナ（ハイエナ）死に神が踊る　死に神が踊る電波の中で　死に神が踊る骸骨が笑う　骸骨が笑う仮面の下で骸骨が笑うヒーローは誰だ　ヒーローは誰だ死体の上の　ヒーローは誰だ（仮面劇のヒーローを告訴しろ）そして、このアルバムには、PANTAのもうひとつの顔であり、ファンが愛してやまない繊細なスローナンバーが1曲もない。トシの一時離脱～後に歌謡曲で大活躍する馬飼野の参加を、その理由とする意見もあるが、前作「誕生」も同じラインナップで制作されており、特にスローの佳曲が多かったので、一概には言えない。前作の反動か、なにか「気分でなかった」のだろうか？オリジナルメンバーでもあり、「トシ＝頭脳警察のボディ」の人も多く、オリジナルアルバムの6枚中、最も評価の低い1枚かも知れない。コード進行、リズムアレンジも斬新だし、1作ごとのサウンド・プロダクション的にも、日本のロックがすくすくと育つようすが垣間見れるのだが。後に、「頭脳警察そのものである」と、PANTAが述懐した、初期の頭脳警察を思わせるシンプルなコード進行とメロディーの、「間違いだらけの歌」でアルバムが終わり、次作ではトシが復活する。聴かせて新しい歌を　教えて造り方を飾らないで　自然なままで　間違いだらけの歌を見せて君の光を　話して君の怒りを曲がらないで透き通ったままで　涙に充ちた怒りをがむしゃらに突き進む　オレ達は反逆の天使バカと恥知らずは承知の上さ教えて君のことを　聴かせて君の音を隠さないで壊れたままで　玩具のようなオレに見せて君の未来を　話して君の狙いを待たせないで　じらせたままで置かないで　こんなオレを（間違いだらけの歌）